小さな機能美の世界
- 文と写真: Shuhei Miyahara
- 2020年2月16日
- 読了時間: 2分
更新日:2020年2月28日

機械いじりが存外楽しい。きっかけはクルマを新しく購入したことだった。買ったあと何となくエンジンルームを眺めると、エンジンやパイプやケーブルが整然と詰まっている。なかなか美しいな、と思った。20世紀初頭、建築家のルイス・サリヴァンは「機能は形態に従う」と言った。つまり、ペンギンが水中で素早く泳ぐために美しい流線型をしているように、工業製品(サリヴァンは建築のことを言ったが)も機能を追求すると必然的に美しくなるというものだ。
クルマの外形はさまざまな嗜好をもつ顧客に合わせるためにさまざまな形をしている。しかし、普段見えないエンジンルームはサリヴァンの言葉を体現した世界。エンジン内部でガソリンに点火し、その爆発力から回転の力をつくり出し、それを車輪に伝える機構。熱いエンジンを潤滑したり冷却したりする機構。エンジンの回転力を少し借りて発電する機構。──クルマが必要な各種部品を、限られた空間の中に整備性を考えながらいかにうまく搭載するかということこそが重要だ。
そのように頭を悩ませてつくられたシステムからは、何となく設計者の思想のようなものも見えてくる。それが面白くて触っているうちに、簡単な整備は自分でできるようになってみようと思った。エンジンオイルやエアフィルター、点火プラグの点検・交換などは道具さえあれば、やってみると意外とできるものだ。同時に、これは高度に複雑な機械。プロ整備士のプロ性も身にしみて感じる。そんなわけで、彼らに敬意を払いつつ、素人は素人なりにこの機能的で美しい小さな世界を楽しみたいと思っている。
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