11月に入り秋らしさが深まってきた。日中はまだあたたかい日が続いているけれど、着実に木々の葉は色づき、日没が目に見えて早くなっている。今年の梅雨前に自宅のリノベーションで導入された薪ストーブが、ようやく先日火入れ式をむかえた。リノベ工事で余った廃材と去年切っておいたウバメガシの薪をつかった3回の慣らし運転を終え、あとは気温が順調に下がっていくのを待つばかりとなっている。
同時に来シーズン用の薪づくりをはじめた。7月の豪雨で崖が崩れ、横倒しになったクスノキを区長さんの許可をもらって切り出している。それほど大きな木ではないけれど、それでも相当な量の薪が確保できるだろう。チェンソーの刃を入れると、クスノキはとてもいい芳香を出す。樟脳、カンフルというらしい。切り出してきたばかりの幹は瑞々しく、斧を立てると水分が滲みでる。表皮には深い亀裂が刻まれ、そこに地衣類やコケを宿している。
このような生命を燃料として利用することに、何となく後ろめたさのようなものもある。でも石油や電気のかわりに島の豊かな自然からすこしずつ分けていただき、それを燃料として暖をとることは、化石燃料に依存した現代社会からわずかだけど距離をおくことができるということかなと思っている。弓削の山から切ってきた恵みが鋳鉄製のストーブのなかで家をあたため、炭素となってまた自然に帰っていく。化石燃料や原子力エネルギーをつかうより格段におだやかな循環を自分の家に組み込めたことに、静かな興奮を覚えている。