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  • 文と写真: Shuhei Miyahara

「いい道具」論

最終更新: 2月28日


薪ストーブを導入したのに合わせて、自分で薪づくりをするべく斧を買った。いくつかのメーカーを検討し、実際に手にとってみたなかで、グレンスフォシュ・ブルークスというスウェーデン製のものを選んだ。

圧倒的なつくりの良さにほぼ即決。何しろ美しい。つくり手の愛情や仕上げの丁寧さ、素材の良さが伝わってくる。何度か使ってみたが、柄の長さとヘッドの重さのいいバランス設計、よく木に食い込む形状の刃、保護されたヘッドと柄の接合部、何を取っても非の打ち所のない、まさに一生ものの道具。ヘッドには一つひとつ、つくり手のイニシャルが刻印されている。僕の買った大型薪割り斧には「KB」。

「いい道具は人を助けてくれる」。大三島のパン屋・小松さんの言だ。つまり使い手の腕をカバーしてくれると。まさにその通りだが、僕はそれに「いい道具は人生を豊かにしてくれる」も付け加えたい。この年になると道具の良し悪し──素性といってもいい──がよくわかるようになってきた(それにつれて、人も)。丁寧につくられたいい道具は、長く使え、シンプルで美しく、そして使う楽しさがある。

雨が降ったので薪割りに行けなかった。こんな日は、何回か使った刃を砥石で磨いてみる。少し欠けてくすんだ刃を磨くと、下からまた美しい地金があらわれた。こうやって何十年も付き合っていきたいと感じさせてくれる道具を使えるのは、この上なく幸せなことだと思う。


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