文と写真: Shuhei Miyahara
美しい炎に出会う
更新日:2020年2月28日

薪ストーブを導入して2シーズン目を過ごしている。着火し、うまく火を大きくしていくのにも慣れてきた。初めはなかなか難しい。冷間状態から火をつけるにはコツのようなものがあって、木が燃える理屈がわかったうえでそのコツをつかむと、スムーズに火が焚けるようになる。イメージ通りに火が広がり、温度計の針が示す温度がぐんぐん上昇するのを見るのは、この上なく楽しい。
何事も準備がいちばん大切で、それは火をつけるのも同じ。まず、割り箸のような細い木から、それより少し太い木、直径5cm程度の中ぐらいの木、10〜15cm程度の太い木というように、太さで5段階ほどにわけた薪を事前に取り揃えておく。太い薪にいきなり火をつけるのは不可能だから、細い木から順に使って徐々に火を大きくしていく。細いのは杉や檜などの軽い針葉樹がよく、太いのは木目がしっかり詰まった硬い広葉樹が適している。針葉樹は着火がしやすく(すぐ燃え尽き)、広葉樹は(火がつきにくいけど)じっくりと燃えて火持ちがいい。
こうして日々、薪ストーブに火を入れていると、なんだか社会とか仕事とか、あるいは人生とか、こうして火を大きくしていくのとよく似てるなあと思う。計算しながら段取りをすること。みんな、それぞれに適した役割があること。いきなり大きなジャンプはできないこと。火が安定してきても、状況を確認しながら空気と薪の供給量を微調整しつづけること。一つひとつは全く地味な作業なのだけれど、すべてを丁寧に行えば暖かく美しい炎に出会うことができる。そして僕は、こういう作業が思いのほか好きだ。