検索
  • 文と写真: Shuhei Miyahara

ちょっとゾクゾク

最終更新: 3月30日



先日、ちょっとしたゾクゾク体験をした。広島県庄原市の山奥に新しくできた古民家宿泊施設を撮影するために、一泊二日で現地に入った時だ。近ごろは建築写真を撮るとき、星空を入れた写真を撮るようにしている。建築写真と星景とのコラボって、環境光の少ない郊外でしか撮れない。ここは周りが山に囲まれているから、暗さはバッチリ。山裾から残光がなくなる頃には、南の空にシリウスがひときわ明るく輝いていた。雲はほとんどなく、月も出ていない。満天の星空。最高のコンディションだった。

周囲の灯りはこの古民家から漏れ出るオレンジ色の照明だけ。その室内光も、15秒の露光を星の光と合わせるために豆電球程度の光量に絞っていた。建物からちょっと離れると正真正銘の真っ暗だ。そよ風でカサカサとこすれ合う黒い熊笹の群落を背に、ファインダーを覗いて建物を捉えた。周囲の森全体がゆっくり揺れている。すると突然、ガサッ!と得体のしれない物音がした。やばい。僕は構図とフォーカスを合わせたカメラを置いてたまらず逃げた。

暗闇の中に正体のわからない何かがいる──結局、建物の中からコソコソとリモコンでシャッターを切り、恐る恐るカメラを回収しにいった。たぶんネズミか何かだったのだろう。後から冷静に考えたら笑ってしまうけれど、何しろ見えないから対処法がわからないのだ。そういえば子どもの時によく感じていた感覚とよく似ている。暗いトイレに行くの、怖かったなあ。未知の病原体に際して現代人が実に合理的でない振る舞いをするのも、もしかすると根っこは同じかもしれないですね。あ、ここは建物も周辺環境もすごくいい宿泊施設です。ぜひこの非日常の暗さや星空も体験してみてほしい。また折を見てご紹介します。

109回の閲覧

©2018 Setouchi Editorial Institute / Setohen|お問い合わせはこちらから